農連地区に新たな“まち”を創る
「農連市場地区防災街区整備事業」
那覇市中心市街地の南に位置する、新たなラウンドマーク「のうれんプラザ」。 三角形型の印象的な建物を中心に高層・低層の共同住宅も構成。建設だけでなく周辺一帯のインフラ整備も手掛けた、金秀建設初となる一大プロジェクトであった。
比類なきプロジェクトの始動
「初めて全体計画概要と北街区敷地の規模を現場で目の当たりにしたとき、経験したことのない緊張感を持ったことは未だに忘れることはありません」
プロジェクト現場を訪れた際の感想を、総括現場代理人の宮平正秋はそう振り返る。2016年6月のことだ。 目の前には、受け持ち工区であるA-1地区(のうれんプラザ)の敷地には、立ち退き移転前の建物がいくつか残っている状況で、A-5地区(学校棟)およびA-3①地区(権利者住宅棟)地区の基礎工事、山留め工事がはじまりかけの頃だったという。
当事業は、特定事業主として既設建物解体、施設建築物11棟(9街区)と8路線の道路整備を主業務とし、金秀建設が受注した案件としては初めての最大規模のものであった。 また、沖縄県から県道拡張工事、那覇市からガーブ河川改修工事といった公共工事関連も同時期に発注され、同時並行で進められることになった。
複雑な作業工程に
スピード感を持って対応
整備事業は、平成27(2015)年12月、北地区の解体工事からスタート。約3.1haの開発エリアは、地区の中央を流れるガーブ川を堺に、北街区と南街区に区分され、北街区には農連市場を中心とする建物が密集していた。南街区は周辺住民への安全を考慮しながら、建物解体作業を行い、下水道移設及び新設、橋の撤去・新設、幹線道路新設、周辺道路の拡張工事等インフラ整備工事が並行して進められた。
「旧のうれん市場の移転スケジュールが決まっている中で、着工日程がずれるたびに全体作業計画修正に留意しながら工程を修正。全体工程会議には、常に緊張感が漂っていました」
プロジェクト全体の工期は約4年半であったが、この規模にしては短期間であったと宮平は言う。そのため、現場ではさまざまな工夫や技術を取り入れた。タブレット端末機の使用により、写真や動画で現場事務所と現場間における状況の遠隔共有化を図った。また、工事の効率化を目指してPC工法が 設計の段階で採用され、施工段階において、仮設計画の検討・実施で作業効率を図ることができた。
工事の後半からは、県道の拡張工事による作業スペースの一部変換、権利者棟の先行完成に伴う幹線道路の一部開放、入居など、これまでとは異なる作業が加わり、さらに一般歩行者・車両への導線計画調整対応など、周辺環境への配慮も必要となった。
プロジェクトメンバーからのコメント
建設本部 建築工事部担当部長
宮平 正秋
建設本部 建設工事部次長
洌鎌 博之
土木工事部担当次長
長嶺 敦
最強のチームワークで
新しい“まち”が生まれた
いくつもの工程が重なる現場で徹底したのが5S(整理・整頓・清潔・清掃・躾)運動活動管理の実施だ。現場が雑然としていると事故を招いてしまう。
「作業員が300人を超える中、各区地区担当代理人および技術員が『安全第一』を意識した5Sを徹底し、全工期を通して重大災害を発生することなく、工期を無事に終えたことに感謝しています」
また、グループ企業のバックアップも大きかった。建物構造体の鉄骨製作、PC製作、アルミニウム製建具聖俗、鉄筋資材、屋根資材といった高品質な製品をより迅速に入手できることも金秀建設の強みであり、事業の成功に結びついた。
「当社だけでなく、協力会社との連携も大きかった。成功の理由は“チームワークの良さ”。それに尽きますね」
金秀建設の技術力とチームワークが生み出した新たな“まち”。市民が安全に、安心して暮らせるまちは、農連地区の発展や地域活性化に大きく貢献することだろう。
プロジェクトメンバーからのコメント
建設本部 建築工事部
伊敷 明人
建設本部 建築工事部
神谷 杏奈
PROJECT MEMBERプロジェクトメンバー コメント
建設本部 建築工事部
伊敷 明人
「のうれんプラザ」の杭工事が終わった平成28(2016)年から事業に参加し、A-1地区及びA-3③地区で監理技術者として施工全般に関わりました。 主に設計との調整打ち合わせ、工程管理、現場品質管理等、現場配置された他の技術員及び現場作業員への指示調整もあるなか、規模に対して工期が短く、慎重さと問題解決のスピードが求められました。 工期が厳しかったA-1地区の工期末には、他物件の現場技術員の応援もあったり、金秀建設のチームワークを感じました。 A-3③地区で工期短縮のため工夫したことは、工場で造ったPCスラブの天井面のジョイント部を仕上げ下地としてそのまま使用したこと。 通常は、左官補修をして仕上げを行うのですが、設計と施主と打合せを行い、工場で見本を作成して提案したところ採用され、工期短縮ができたのは嬉しかったですね。
建設本部 建築工事部
神谷 杏奈
本事業では、初めて現場代理人を担当しました。工程・予算管理、設計者との打合せ、施主とのやり取りなど、幅広い経験をすることができました。 また、監理技術者も兼任ということで、自主検査等の品質管理の向上に努めました。業務中に心がけていたのは、笑顔でいること。 新人の頃に職人さんから「笑った方がいいよ」と言われ、どんなに忙しくても笑顔でいるように心掛けました。 今回のプロジェクトでは、建築工事とインフラ工事が同時工程で行われ、土木インフラ工事との連携は必須でした。 特に、南地区では定期的に各工事担当者が集まって全地区の工程及び仮設計画等のすり合せ確認を行い、各地区個別工程管理の調整や問題解決に対して早急に対応できたのは、 やはり同じ社内メンバーだからこそだと感じました。
PROJECT MEMBERプロジェクトメンバー コメント
建設本部 建築工事部担当部長
宮平 正秋
農連市場地区防災街区整備事業に2016年6月から関わりました。現場を目の当たりにしたときの緊張感は、未だに忘れることはありません。 複雑な工事ゆえ、着工日程がずれるたびに工程及び全体作業計画を修正。安全面に配慮しながら必死で工期を厳守しました。 2017年10月に北街区の整備工事が完了すると、2018年1月から南街区に関連する既存建物の立退き解体工事の着工、インフラ整備土木工事と建築工事の調整確認及び県道拡張工事に伴う計画調整、 ガーブ川護岸整備工事に伴う那覇市上下水道局発注工事関連の調整など、いくつもの工事が並行して進みました。 事業自体は金秀建設が特定事業主となり施工自体も単独事業となっていますが、事業全体に渡り、金秀グループ関連会社の協力のもと行われました (建物構造体の鉄骨製作・施工、PC製作・施工、アルミニウム製建具製造・施工、鉄筋資材、屋根資材の提供など)。 事業施工に関わっていただいた、すべての協力会社の代表者及び各職長・作業員の皆様には、お礼の言葉を捧げたいと思います。
建設本部 建設工事部次長
洌鎌 博之
南地区の工事が始まる平成30(2018)年6月からプロジェクトに参加。農連南街区A-3②共同住宅(ル・サンク那覇開南)の現場代理人を務めました。 19階建てという高層は当社でも初めての案件でしたが、PC工法に加え「競り上げ足場」を初採用し工程を管理。又、作業用の高速エレベーター採用により、作業効率を高めました。 今回の現場で難しいと感じたのは、PC造、RC造、S造といった、工事が複合した建物であった事が苦労しました。このプロジェクトには、約30社の下請け工事関連会社が関わり、 現場には多いときで100人以上の職人が入りました。現場を工程通りに進められたのは、各関係者全員の協力の賜物。本当に感謝しています。 日に日に建物が出来上がり、変化を目の当たりにすることでき、ものづくりの喜びを実感しました。
土木工事部担当次長
長嶺 敦
平成28年6月から土木工事を担当し、主な工種は、街路整備工、下水道工、改良工、河川改修工、橋梁工、解体工を施工。スタッフは社員4人、測量業者2人の計6人で現場を管理しました。 各工種で高い技術を求められましたので、私を含めてスタッフ全員が良い経験を積むことができました。 現場周辺には事業に反対している方もいらっしゃると聞いていたので、住民のみなさんにはとても気を遣いましたが、90歳のおばあちゃんからの天ぷらの差し入れや、 青果店のおばちゃんからミカン1箱をもらった時はうれしかったですね。また、現場では6Sに取り組み、自分自身の至らない点に気付かされることもありました。 社員と協力会社の技術力が結集し、無事故で竣工を迎えられたことが大変うれしく、関係者全員へ感謝の気持ちでいっぱいです。